2008年8月21日木曜日

カラマーゾフの兄弟

ものすごい小説だった。今回光文社の亀山郁夫訳で最初のカラマーゾフの兄弟と出会えてよかったと思っている。この小説は日本語訳版がなんと8種類もあるらしくどの訳書で読むか迷ったのだけど、この古典新訳文庫が掲げる「いま、息をしている言葉で」というコンセプトどおりとても読みやすくこれだけの長編にもかかわらず一気に読了できた。著者の経歴や十八世紀後半のロシアの時代背景もほとんどなにも知らない無知な状態でこの大作にいどんだ自分には各巻末に付いている読書ガイドとエピローグ別巻の訳者による「ドストエフスキーの生涯」と「解題」がより理解を深めながら読み進めるのに大いに役に立った。特に「解題」では全く気づくことなく読み飛ばしていた細かなディテールや登場人物のなにげない発言や仕草、ト書きにまで神経が張りつめられていることに気づかされ驚いた!それにしてもこの究極の未完の物語はドストエフスキーの頭の中ではどのような構成で完結するつもりだったのだろう。訳者あとがきにて特に印象的だった言葉があるのでここに引用する。

わたしはいま、読者のすべてに代わって、この小説が未完に終わったことを惜しむ。未完の音楽は数知れずある。モーツァルトの「レクイエム」、マーラーの「第十番」ー。しかしドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」こそは、人類がついに手にできなかった、もっともまばゆい遺産の一つであるにちがいない。

まだまだ何度でも読み返せる一生物の大切な本になった。